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 異色の空戦記といっていいだろう。何が異色かというとうまく言えない。ただ、本書は輝かしい空戦の様子を記した本ではない。私のように零戦搭乗員の手記を読みまくった人間は本書の冒頭から意表を突かれる。搭乗員が搭乗員を目指した理由というのは、ほとんどの人が「空に憧れていたから」なのだ。


 これは空戦記が好きな人間でなくても大体想像できると思う。しかし本書の著者、角田和男氏は違う。著者は飛行機には全く興味が無かったという。家が貧しく食い扶持を減らすためだったという。少年開拓団と少年飛行兵で悩んだ結果、少年飛行兵を選んだ。


 角田氏は予科練乙種5期の出身だが、実は乙4期も受験していた。しかし、数学は満点だったものの、国語の成績が5点足りなかった。残念ながら不合格となり翌年5期生として採用された。その後、角田氏は航空兵としての訓練を受けて実戦に参加することとなる。


 多くのベテラン搭乗員がそうであるように著者も激戦地ラバウルに送られる。中でも興味深いのは連合軍が赤十字の施設に武器弾薬を保管していたことや著者が体験した慰安婦の実態だろう。慰安婦問題に関心がある人は読むべきだろう。実態の一つがよく分かる。


 それはそうと、著者が本書で一番書きたかったことはタイトルにもあるように「特攻」についてだ。本書後半部分の特攻に関するリアルな描写はかなり衝撃的であり、そして悲しい。


 ある時、著者は下士官の搭乗員宿舎に向かう。しかし隊舎に向かう途中、先任兵曹にこう言われる。

「ここは士官の来る場所ではありません」

 しかし、著者が下士官出身の特務士官であることに気が付き、搭乗員隊舎に入ることを許されるが、そこで著者が目にした光景は昼間、元気よくしていた特攻隊員達が黙って座っている姿だった。怖くて眠れないという。そしてそれを囲むように特攻隊に指名されていない搭乗員達も起きている。


 申しわけなくて眠れないという。そして翌朝、特攻隊員達は元気いっぱいに飛び立っていくという。特攻隊員の気持ちというのは指名された人間にしか分からないだろう。当然、私も分からない。しかしこういった書籍を読むことで少なくとも頭の中で理解することだけはできる。それが本の意義だ。


 本書は著者の人柄がにじみ出ている。著名な撃墜王、西沢広義が著者に部下を厳しく育てなければダメだと注意する。しかし著者にはそれが出来ない。そして列機を失っていく。しかしまた新しい部下が自分を著者の列機にしてくれとくる。そしてその部下も失ってしまう。それでも著者は部下に厳しくできない。


 著者を慕っている部下が次から次へと列機にとくるという。優しすぎる零戦乗りだった。また別のエピソードもある。著者の部下が佐官に殴られたという。著者はその佐官に殴りかかる。しかしその佐官は強かった。著者が苦戦していると今度は部下達が著者を守るために突入してきたという。


 本当に部下に愛された人だったのだと思う。そして戦後も部下達のことを毎日思い出すという。本書は私が読んだ搭乗員の手記の中でも私が特に好きなものだ。因みに本書で面白いのはフィリピンに著者がいたとき、著者の部屋にベテランパイロットたちが集まって空戦談義をするという件だ。


 そのベテラン搭乗員というのは、零戦虎徹、岩本徹三、そして西沢広義、斎藤三朗等錚々たるメンバーだった。真正面から空中戦を挑む西沢に対して、ドッグファイトには参加せず、被弾した敵機や逃げる敵機ばかりを狙って撃墜する岩本と、それぞれの戦法の違いと議論というのは面白い。


 本書は大著ではあるが、内容は充実しており、かなり貴重なものだ。是非読んでもらいたい。



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