不定期更新です。 更新は気分次第でーす(^_-)

 最近、神立尚紀氏の著書を読むことが多い。氏は零戦搭乗員達と親交が深く、そして長い。当初はただのインタビュアーだったのが、最近になればなるほど内容が重厚になり、搭乗員達の内面に肉薄した内容のものが多く、読み応えがある。これは他の航空戦史研究家とは一線を画した独特のものである。


 一番の違いは他の研究家が、「飛行機」を中心に描こうとするのに対し、神立氏は「搭乗員」を中心に描こうとしていることだと思う。つまりは他の研究家は特定の飛行機の物語を描き、そのわき役として搭乗員がいる。


 しかし神立氏の著書は、中心に搭乗員がおり、飛行機は脇役どころか内容の必要上、単語として登場するに過ぎない。・・・と私は考えている。その神立氏が何度も怒りを込めて書いているのは、撃墜王オタクが「撃墜王」「エース」等と搭乗員達を英雄視すること。「何機撃墜のエース」等ともてはやすこと等だ。


 私も神立氏の著書は結構読んだのでその怒りの気持ちは理解しているつもりだ。撃墜するということは相手を殺すということとニアリーイコールであり、数をカウントして楽しむものではないし、そもそもスコアと言っても航空戦はチームプレイだという主張も理解できるしもっともだと思う。


 まさにその通りだが、私にはもう一つの気持ちがある。簡単にいうと撃墜王オタクという気持ちだ。子供の頃、私にとってヒーローは撃墜王だった。岩本徹三であり、坂井三郎であったのだ。単純に強く、周りからも評価され信頼されているのがカッコよかった。


 そしてそのまま撃墜王を探すことが趣味となった。私の子供の頃はネットは普及していない。というより実質無かった。20歳くらいになってやっと普及してきたが、今では考えられないことだが、「岩本徹三」というキーワードで検索しても3件程しかヒットしない時代だった。そして内容もお粗末なものだった。


 ということで私は当然のように書籍に走ったのだ。搭乗員の自伝、記録を読むことから始まり、研究家の著書をむさぼり読んだ。当時は1995年前後。零戦搭乗員も高齢ながらまだ多くの方が健在だった。そして太平洋戦争終戦50周年という節目の年の前後であり、多くの書籍が出版されたのだ。


 そうこうしていくうちに撃墜王の名前と撃墜数の情報も少しずつ集まってきた。そしてそれらの元になっているのが、『日本海軍戦闘機隊』という本であることを知ったのだ。当時はネットは無いので探すのは「足」だ。もちろん普通の書店では扱っていないので古本屋をくまなく探した。


 初版が1975年のマイナーなジャンルの本なのでどこの古本屋を探しても売っていないのだ。それでも欲しくて欲しくて探しまくった結果、神保町に「文華堂」という軍事物専門の古書店があることを知った。「文華堂」に入り、探してみたが見つからない。


 そこで店の人に訊いてみた。「これだね」と言って出された本には『日本海軍戦闘機隊』と赤い字で書いてあった。とうとう見つけた。やや全体が痛んでおり、表紙には零戦が空を飛んでいる絵が描いてある。これが私が探し続けた『日本海軍戦闘機隊』だった。


 この感激は今でも忘れられない。家に帰るまで待ちきれなかった。電車の中で袋から取り出し中身を見る。席に座れなかったのでドアの横の三角コーナーに寄りかかりながら本を開いたのを覚えている。


 その本の中には、私が欲しかった情報の全てがあった。その後、全てを読み、何度も何度も読み返した。本の中には憧れのヒーロー達がいた。名前も撃墜数、出身期。覚えようとしなくてもどんどん頭の中に入る。本当にうれしかった。


 これが私の撃墜王オタクの青春譜だ。そして今でもヒーローとして撃墜王に憧れる気持ち、撃墜数が気になってしまう気持ちがある。そして大人になった私は前述のように撃墜するということは「人を殺すこと」、それをしたことによって苦しみ続ける人達の存在、共同戦果である撃墜を個人のものとして祭り上げられる不快さを感じる人。そういう人達の存在を知ることとなった。


 理性と感情の相克。理性で考えるならば撃墜王オタクはダメだ。しかし未だに憧れる気持ちは持ち続けている。どちらも持ち続けているのが現在の私だ。もしも私が撃墜王オタクでなかったら、零戦搭乗員の内面についての本を読むこともなかっただろう。


 私のように矛盾した状態で戦記関係の本を読んでいる人は案外多いのではないかと思う。きっかけは「かっこいいから」しかし実情を知るに従って理性で物を考えるようになる。しかし「かっこいいから」という気持ちを消すことはできない。人間の頭というのはやっかいだ。どうしようもないものであり、多面的であり相対的であり、矛盾であり、面白くもあり、魅力的だ。



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