森 史郎 著
文藝春秋 (2015/12/15)

 

 今日は、零戦搭乗員戦記の名作『海軍戦闘機隊』の著者、森史郎氏の著書『零戦7人のサムライ』について書いてみたい。本書は零戦搭乗員6人について森氏が本人や関係者に聞き取り調査をして執筆したものだ。登場する搭乗員は、新郷英城、志賀淑雄、上原定夫、鈴木実、杉田庄一、岡元高志、大黒繁男の各氏である。

 本書は森氏の独自調査による内容であり、著名な搭乗員、新郷英城氏、志賀淑雄氏、杉田庄一氏等についても今までにない新しい情報等があるが、特に私が興味を惹いたのはあまり知られていない戦闘機搭乗員、上原定夫氏、岡元高志氏について詳しく書いてあることだ。

 上原定夫氏はあの著名なエース、坂井三郎氏と同じ台南空に所属し、初期の航空撃滅戦、ラバウル航空戦に参加した。その後マラリアを患って静養、フィリピンで特攻隊の援護任務についた。戦後はジェット機、ヘリコプターの搭乗員として活躍した飛行機一筋の人生だった。自分の戦果をアピールしない人だったようなので撃墜戦果はあまり知られていない。因みに『日本海軍戦闘機隊』によると撃墜数は10機とある。

 まあ、撃墜数自体は一般的に誤認が多く、撃墜もチームプレイであることからあまり意味のあるものではないが、一応書いておく。というのは、上原氏が生前、遠慮がちに「坂井三郎氏が撃墜王になれたのは自分が敵機を引き付けたからだ」というようなことを語っていたからだ。これは敵機撃墜がチームプレイであるということをよく表している。

 岡元高志氏の部分は本書の中でも歴史の証言というのに相応しい。インド洋で英空母ハーミスを撃沈した際、零戦隊がハーミスから脱出した水兵を面白がって銃撃していたこと、同じく日本人搭乗員がガダルカナルでパラシュートで脱出した米軍パイロットを撃ち殺したこと、逆に脱出した日本軍搭乗員を米軍が対空機銃で日本軍搭乗員を形が無くなるまで撃ちまくっていた等、戦争が決してきれいごとではないことが分かる。

 さらに戦争後期になると若年搭乗員が体調不良を理由に出撃を嫌がったりといったこともあったようだ。特に衝撃的なのはフィリピンで航空隊司令が部下の士官搭乗員に対して「戦闘行動には特務士官を使え、戦争が終わっても大切な身体だから大事にしてくれ」と語っていたのを聞いてしまったという件だろう。特務士官というのは兵隊からの叩き上げ士官のことだ。

 かなり重い話になってしまったが、戦後70年が経ち、太平洋戦争がすでにファンタジーの世界になり、妙に美化されるようになった現在、貴重な証言といえる。

 

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