渡辺洋二 著
光人社 (2008/2/1)

 

 太平洋戦争末期、日本軍の戦法は特攻作戦に重点が移されていった。特攻作戦はそれ以前にもあったものの、大々的に特攻作戦が始まったのはレイテ沖海戦からだ。本書は特攻作戦を敢然と拒否し地味な正攻法の夜間攻撃に特化した彗星夜襲隊、すなわち芙蓉部隊の成立から終焉までを描く。

 芙蓉部隊は、太平洋戦争末期にあっても比較的練度の高い水偵搭乗員を終結させ、夜間攻撃に特化した部隊だ。超個性派で策略に長けた美濃部少佐が各所に働きかけて成立した。本書では美濃部少佐が芙蓉部隊を構想し成立させたまでを詳細に描いている。

 ラバウル帰りのベテランで水偵搭乗員でありながらエースの河村一郎飛曹長をはじめとする生き残りのベテラン搭乗員を終結させた。もちろん全てをベテラン搭乗員で編成することなど当時の日本の状況では不可能だ。当然、新人搭乗員も多数在籍する。

 その新人搭乗員も燃料不足の中で独特の方法で訓練させ、とうとう全海軍航空隊で二番目にAクラス搭乗員を擁する部隊となった。因みに一番練度の高かった部隊は日本のトップエース、岩本徹三や西沢広義をはじめとする戦地帰りの搭乗員が多数在籍する203空戦闘303飛行隊だ。

 使用機材もまた面白い。当時の航空隊は戦闘での消耗や稼働数の関係で100機程度は必要だったようだ。しかし当時の日本には100機も航空機を出せる余裕はない。特に芙蓉部隊は夜間攻撃に特化しているため、夜間戦闘機月光等、斜め銃を装備することや爆撃能力のある機体がふさわしい。

 そこで美濃部少佐が目をつけたのが水冷式エンジンを搭載した彗星艦爆だった。彗星は性能こそ高いものの、複雑な構造の液冷式エンジンが災いして稼働率が低く、各航空隊では邪魔者扱いされていた航空機だ。各航空隊に配備はされていたものの使用されず、そして回収する場所もないため各航空隊基地に放置されていたようだ。

 

 

 彗星の最高速度は11型で546辧12型では580劼肪している。空冷型では速度は落ちるがそれでも574辧それまでの99式艦爆の最高速度が22型でも428劼任△襪海箸鮃佑┐襪罰蔽覆紡度が上昇している。因みに零戦52型の最高速度は560劼任△襦

 稼働率が低いことで有名な彗星艦爆であるが、芙蓉部隊では熟練した整備員がメーカーで専門教育を受けることで80%以上という高い稼働率を実現したといわれる。

 その彗星を主力として芙蓉部隊は地味で堅実な夜間攻撃を開始する。太平洋戦争末期の戦いであり、犠牲は多いが特攻攻撃は行わない。著者はこの芙蓉部隊の活躍を描くことで特攻作戦という非人間的な戦法を批判している。太平洋戦争がファンタジーの世界になりつつある現在において本書は特攻とは何なのか、戦争とは何なのかというのを考えるためには最高の素材の一つであることは間違いない。

 

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