大井 篤 著
角川文庫 2014/5/24

 日本軍が補給を軽視していたというのはよく言われることである。本書は海上護衛総司令部の参謀として太平洋戦争に参加した著者が「海上護衛」という観点から太平洋戦争を見たものだ。私は基本的に亜流の人間なので読むものも亜流なのだ。海上護衛戦とは何か。これは著者が命名した輸送船団護衛の戦いのことである。感想から言えば、これは面白い。新刊でも800円程度だったはずだけど、この内容、ボリュームで800円というのは定価が安すぎるのではないかと思うほどだ。

 アメリカはイギリスへの物資輸送でドイツの無制限潜水艦戦の威力をまざまざと見せつけられた。無制限潜水艦とは、乗員(民間人)の生命を無視して攻撃を行う潜水艦戦のことである。人間は成功より失敗から学ぶ。アメリカはこれによって潜水艦による船舶攻撃の威力を知り自らが行うことにした。しかし、太平洋戦争初期の日本は幸運の連続だった。真珠湾攻撃は予想外の大成功をし、同時に行われたフィリピン攻略では日本海軍機が投下した爆弾がたまたまアメリカ軍の魚雷庫に命中。以後、アメリカ軍は無制限潜水艦を行おうにも魚雷がなく行えなかった。

 これは日本は船舶の損害を予想外に低くすることとなった。さらに海戦初頭のアメリカ製魚雷は性能が悪かった。これらの幸運は日本に災いした。当初の予想より損害が下回ったため、日本は海上護衛戦を軽視することとなった。海上護衛戦には護衛用の艦船が必要である。護衛に使用できる艦船は爆雷を装備しており、尚且つ航続距離の長い艦船でなくてはならない。駆潜艇は爆雷は装備しているものの航続距離が短すぎて使用できない。

 海防艦は航続距離は十分でも開戦当初は爆雷を12個しか積んでおらず潜水艦相手には少し弱かった。そうなると日本の軍艦で護衛に使用できるのは駆逐艦ということになるが、駆逐艦は基本的には海上護衛には回されなかった。これは日本海軍が海上護衛を軽視していたことと前述の初戦での輸送船舶の損害の軽さがもたらした結果だ。この状況はガダルカナル撤退後まで続いた。その後船舶の損害が徐々に大きくなり日本も海上護衛総司令部を設置して対応したが、海上護衛には二線級の艦船しか配備されなかった。

 著者はシーレーンの確保が日本のような島国には最重要だと考える。そのために海上護衛が必要であり、それを維持するために艦隊決戦が行われる。という順序でなければならないという。これは主流派の海軍上層部にいる人間には出てこない発想だろう。結局、シーレーンを破壊された日本は物資が欠乏し敗北した。基本的には物資を自給できるアメリカと日本は国力からみればどうやっても勝てないが、戦争に最善を尽くしたとは言い難い。補給が戦略を決定することを歴史から解明した『補給戦』などを見るまでもなく補給は最重要だ。堀栄三『大本営参謀の情報戦記』と並んで本書は太平洋戦争の本質を理解する上で重要だ。

 

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