坂井スマート道子 著
産経新聞出版 (2012/8/17)

 

 今日紹介するのは多分、日本で一番有名な撃墜王、坂井三郎の著書・・・ではなく、坂井三郎の子、坂井スマート道子氏の著書『父、坂井三郎』である。64機撃墜した海軍航空隊の撃墜王、大空のサムライとして有名な坂井氏の普段の生活、ものの考え方などがよく分る本である。

 まず、冒頭で坂井三郎氏が一番批判されている撃墜数について述べる。坂井氏は撃墜数64機となっているが自称したことは一度も無く、これは出版社が創作した数字であるとのこと。そして坂井氏との思い出が描かれる。坂井氏はアメリカ人に対して

 

「お前、アメリカ人は楽しいぞ」

「話が早くて、簡単なんだ。話していて気持ちがいい」

 

というようにアメリカ人とは波長が合ったようだ。アメリカ人も坂井氏の著書を読んで今までは血も涙もない存在だと思っていた零戦パイロットが自分達と同じ人間なのだということが分ったという。さらに本書では坂井氏がティベッツ大佐(エノラゲイ機長)と対話した際のエピソードも記している。坂井氏はティベッツ大佐に対して命令であれば自分も投下していたと語り、論理的にティベッツ大佐に対する日本人の批判が間違いであると語ったという。

 このくだりは本書に詳細にしるしてあり、引用したかったがあまりにも長かったために断念した。ただし戦争当事者同士のやりとりとしては貴重な記録だと思う。さらに本書では坂井三郎氏の哲学、子供への教育などが語られる。これは坂井氏の子供であるスマート道子氏でなければ書けないものだろう。外に出たときは前後左右上下を確認するなど、坂井氏独自の考えが面白い。

 本書の中で特に注目したいのは、「おわりに」でスマート道子氏が坂井氏の批判ともとれる内容が記述されている、神立尚紀『祖父たちの零戦』に言及していることだろう。零戦搭乗員でもっとも有名になってしまった坂井氏への評価が相対的に見られるのが面白い。本書は上記『祖父たちの零戦』と併せて読むのが面白いと思う。どちらの本も事実を極力客観的に記載しているのでこの2冊を読むと坂井氏の輪郭の一部が浮き彫りになると思う。その姿をどうとるかというのは読者次第であろう。私は魅力的な人物だと思った。

 

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