ノマドは3タイプに分かれる。ハイパーノマド、中層ノマド、下層ノマドである。国境を超えるのはエリートのみではない。下層ノマドも仕事を求めて世界を移動する。例えば日本人のフリーターが大連で時給340円の日本語のデータ入力の仕事をしている。しかし中国は物価が年々高騰しており、現在の時給では生活できないので、香港に行って仕事を探すそうだ。
企業もノマドとして国境を越える。少しでも経費の安い国へ移動する。それは企業がまるごと移動しない場合も多い。部門ごとに最適の地へ移動する。事実、シンガポール等はいろいろな企業の同一部門が集中しているという。
特に競争が激しい韓国は人材の流出が止まらないという。内需が少なく国内の競争が激しいため、より良い職場を求めて外国へ行くのだ。本書には例としていろいろな人々が登場する。実力をつけるために日本の大企業を辞め、シンガポールの会社でそれまでの半分の給料で働く日本人、日本で大学卒業時に就活したが、全く相手にされず、フリーターとなって、仕事の合間に世界各国を短期旅行を繰り返して調査し、インドネシアの会社に就職した日本人等もいるという。
この本を読んで初めて気が付いたのは企業もノマド化して国境を越えるということだった。多国籍企業というのは昔からあり、本社をどこに移すかというのが度々ニュースになっていたりしたが、一つの会社が部門ごとに違う国に行くというのは考えていなかった。確かに本社に全部門がある必要はないだろう。メール、電話、スカイプ等を使用すればリアルタイムで連絡を取ることも出来る。これからは各部門にとって居心地の良い国に移動していくという。因みに居心地の良いとは、コストが安い、資材、人材等の補充が容易等の要件が当てはまる国である。
本書は日本のサラリーマンについても警鐘を鳴らす。日本の企業は新卒で入社した後、三年位かけて各部門の経験を積み、調整のプロとして出世していくが、これは会社内の専門職に過ぎず、ノマド化した時代には対応できないのである。そして突然、ノマドとして生きることを要求される事態が来ることも十分にありうるという。ただ、不安と同時に自己実現を出来る場であるというメリットも存在する。
日本人でも国内旅行をする感覚で世界を渡り歩く人も多いという。しかし彼らは日本を捨てた訳ではない。彼らは日本が変化するアクティブな国になった時、他国との相対的比較で日本を選ぶという。良くも悪くもこのような時代になっていくのであろう。ただ、このように考えて行くと国家が消えてなくなるのではないかと考える向きもあると思うが、国家はもっと強力であることを最後に書いておく。良くも悪くも・・・。
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