岸見一郎 古賀史健 著
ダイヤモンド社 (2013/12/13)

 

 久しぶりの書評。最近、いろんなところで話題になっているのでケチな私がわざわざ新刊を購入して読んでみた。この本は著者がアドラーの心理学を哲学を援用しつつ分りやすく伝えていくというもの。全頁にわたって「哲人」と「青年」の対話形式でアドラー心理学の内容が説明される。感想から言うと、半分以上は私が今までの人生で実践してきたものだった。しかし残りの部分はかなり参考になった。漠然と考えていたことを明確に論理的に説明してくれたことも有難かった。

 内容はというと、まず、人間というのは普通、原因論で物事を考えるが、実際は目的論で考えているという。原因論というのは、Aという事象が起こったからBという結果になったという至極簡単な考え。例えば、過去のトラウマが原因で現在の私の性格になったというようなもの。しかし、アドラーは違う。逆なのだ。Bという状態にするために過去の事象からAという題材を探してきたというのだ。つまり、現在の私の性格を作ることを目的として私が、過去の出来事の中から目的に合った事象を探してきたのだという。要するに原因があって結果があるというものではなく、自分で判断して現在の状態を作り上げたのだという。

 さらに人間のすべての悩みは対人関係の悩みであると喝破し、他人との比較を否定する。比較するというのは敵との戦いであり、相手と自分の関係を縦関係でみているのだという。大切なのは自分の中の理想と現在の自分との比較であり、他人は敵ではなく、仲間であるという。そしてアドラーは共同体感覚を持つことが大切だという。そしてそれに対する貢献感を感じることで人間は自分には価値があると感じられるという。

 簡単に内容の中で気になった部分を書いてみた。賛否あるのかもしれないが、私はこの考え方はいいと思う。ただ原因論と目的論の関係が本当に普遍的にいえるのかということについては疑問が残った。しかしこれはアドラーの著書を読めば説明されているだろうという気もする。

 アドラーとは別にこの本が面白いのは哲人と青年の対話形式で進行するが、その青年のキャラクターがものすごく良い。青年期の悩める青年であり、無頼派の文学に登場する悩み、苦しみ、そしてひねくれた性格なのである。この青年が時には哲人にからみ、感情的になり、暴言すら吐く。それを哲人が論理的に諭していく。そして青年は前向きに生きていく。読者は時には青年になり、時には青年の感情的な言動に苛立ちを覚える。そして青年をたしなめる哲人にもなり、どんどん本の世界に引き込まれていく。すごい構成になっている。

 

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